
定年退職し、認知症だった愛妻も看取り、一人一軒家で暮らす福山健二(71)。
寂しくはあるが、穏やかでささやかな幸せの日々の中、ある日、物忘れに不安を覚える。
刻々と近づく人生の最期を意識し始めた健二は、息子家族にも誰にも迷惑かけずに過ごせるよう、
健康維持と「認知症予防」に取り組み始める。
その一つとして、市のコミュニティクラブをに参加した健二は、
橋本(71)という陽気な老人と知り合い、酒屋や病院検査を共にして、友好を深めていく。
ある日、水泳教室体験入会の張り紙を見つける2人。
全く泳げない健二は躊躇するのだが、
橋本の「出来ない事、出来るようになるの愉快じゃないですか?」という言葉に後押しされ、
水泳教室に参加することにする。
水泳講師・岸本香里(24)の指導を受けることになった健二たち。
健二は水泳を、今生きる人生のために、大切な「挑戦」であり「目標」だと考えはじめ-。
人生は、今この瞬間も、誰もが輝いている
Q:26年ぶりの映画主演として本作を選ばれた理由、実際に撮影をされて感じられたことなどをお聞かせください。
A:お話を頂いた時に、プロデューサーから最初に言われた一言が「Webにアップされていた岩城さん夫婦の、岩城さんの優しい笑顔を見てキャスティングさせて頂きました」と言って頂いて、すごく嬉しく思いましたね。 プロットを読んで「残りの人生をどう過ごして行くか?」という問いかけに、とても興味を覚えお引き受けしました。
劇中の福山健二と僕は同じ年齢だった訳ですが、僕は今でもバイクに乗るし、レースにも出ているので、自分とのギャップもあり健二の些細な表現に最初は違和感がありましたが、奥さん役の宮崎美子さん、そして友達役の田山涼成さんとは楽しく過ごさせて頂きました。
Q:本作をどんな方に観ていただきたいでしょうか。
A: やはり、同世代の方々には観て頂きたいと思いますね。70才を過ぎても一日一日を楽しくしっかりと生きていく。先を明るく見ていく事はとても大切なことですから。
Q.:劇中で健二は水泳に挑戦しますが、事前に準備されたことなどございましたらお教えください。
A.:上手いか下手かは別として、もともと泳げない訳でなかったので、逆に泳げないように泳ぐ方が難しかったですね。
岸本香里は、水泳選手としての道から離れ、市民スポーツセンターで水泳講師をする女性ですが、私もかつて幼少期の頃に「プロ水泳選手になりたい」と願った事があり、一度は夢を追いかけた競技に役を通して触れられた事が、今までにない、貴重な経験でした。「ここで夢を叶えたい」と、自分の想いも投影させた作品です。
共演させて頂いた岩城滉一さんは、とってもワイルドでパワフルな方なので、撮影現場は常に明るく、共にさせて頂いた時間は、華やかで刺激のある毎日でした。撮影中はたくさん声を掛けて下さり、岩城さんのおかげで私の緊張も自然と解けていきました。
認知症の役は初めてだったので、とても難しいなと思い、皆さまのご協力で施設に見学に行かせてもらったり、勉強をさせていただいたりし、何とか演じさせていただきました。
実際に介護されているご家族の方から見たら、それは違うよ~と思われるところもあるとは思いますが、人それぞれ症状が違うので、やはり難しい、大変な病気だなと感じています。
介護に携わるご家族も大変ですし、また、ご病気になられたご本人も普段何も家事など経験のない旦那様の事は心残りだったのではと思います。
この映画は残された旦那様の理想形です。
良いお友達を見つけるなど、人はいつでも、何歳になっても、誰かと、何かで関わらないと生きていけないものだと、それが出来たとき、人生の「ラストターン」が上手く決まるのではないかなと思います。
歳をとり老いていくことに明るい未来が見えない。
年齢を重ね、経験値は上がっている筈なのに、新しいものについていけないからと、振り落とされてしまう。
今の高齢者達に明るい未来が見えないのであれば、後に続く我々はどうなってしまうのか。
そろそろ年寄の仲間入りする身となり、何とかもがけないものだろうか。
そんな気持ちでこのシナリオを書き始めました。
この作品は、人生のおしまいを感じ始めた老齢の男と、人生を賭けてきた夢に破れた若い女 の交流を描きます。世代や性別は違えど、それぞれにピークを過ぎた自分を生きねばならないことに戸惑うふたりが、出逢うことで、新たな一歩が見えてくる。
人様に迷惑をかけないという信条は、とても尊く崇高ですが、時として人を追い詰めてしまいます。自己責任が持てはやされ、出来ないものが悪く、助けを求める事が罪悪のようにとられてしまう現在の日本社会。弱い者がためらう事なく助けの声をあげられる世になれば、未来への不安から放たれ、今の生活を楽しく安心して生きていけるのではないでしょうか。
不器用な二人の生き方を見つめる事で、そんなことを少しでも感じてもらえば大変嬉しく思います。